『ヒト』が育つ環境作りは「教えること」を教えることから

最近、「後輩を育てるのは難しい」という声をよく耳にします。そこで、人財育成についてちょっと考えてみましょう。

経営資源といえば「ヒト、モノ、カネ、情報」と言われ、『ヒト』が一番最初にあげられるのが一般的です。人財の重要性は認識されていて育成にも力を入れているのに、思うように人が育たないと感じている人が多いのではないでしょうか? 職場の声を拾ってみましょう。

「教え方」が分からない

職場の先輩たちは若手に仕事を覚えてもらいたいと思っていますが、「教え方が分からない」「自分たちは教わった記憶がない」と教えることに戸惑っています。就職氷河期に新卒採用を控えたために『年代の空白』が存在しています。現在、教える立場にいる先輩たちが新入社員の頃がこの『年代の空白』の時期にあたります。先輩とは少し年の開きがあり、先輩というよりは上司という感覚で何でも気楽に聞ける雰囲気ではなかったのかもしれません。

「聞き方」が分からない

若手社員は「言われた仕事をこなすだけで精一杯」「先輩の邪魔にならないようにしています」「やるべき仕事はやっています」と自分としてはちゃんとやっているつもりでいる人もいます。ただ、「何をやったらいいのか分からない」「こんなこと聞いたら『ちゃんと調べたの?』と言われそう」と分からないし聞けない人もいるようです。メールがコミュニケーションの中心になっている彼/彼女たちは聞くことが苦手なのかもしれません。

「教えること」を教える

「教わった記憶がなく、教え方が分からない」先輩たちに「教えること」を教えなければ『ヒト』が育つ環境は作れません。「教え方が分からない」ために「教え過ぎる」状況も発生しているようです。教える側はいろいろと教えてあげようとして「あれもこれも」と説明してしまい、教わる側は「1度にそんなには覚えられない」という状況です。「覚えて」だけでは考えなくなってしまいます。教えようとしていることが「何のために行われることなのか。なぜこのやり方なのか。」を少しでもいいから伝えてあげて、「理解してくれた?」とやさしく聞いてみることも必要ではないでしょうか?
理解してもらうためには「ここまでは分かったかな。付いて来ているかな。」と教える側が相手の理解度を理解することが必要になります。

まずは相手を理解する

「理解してもらうためには、まずは相手を理解する」ということですが、簡単にできることではありません。前回のコラム「コミュニケーション再考」で「コミュニケーションは『共有』することと」とお伝えしましたが、教えるためにも「相手の考えを共有する」ことが重要になります。相手が何に興味を持っていてどの様な考え方をするのか。まずは飲みにでも行って、どんなことが好きでどんなことがやりたいのか聞いてみることから始めてみてはいかがでしょうか?

コラム担当:イノベーションデザイン部
富山 達朗

※執筆者の所属は執筆当時のものであり現在とは異なる場合があります。