堆肥作りとシステム導入プロジェクト

はじめに

堆肥は、土壌改良目的なのか、肥料効果目的なのかにより、内容物の構成(作り方)が変わってきます。

一方、私が携わっている会計・人事システムの導入プロジェクトにおいては、導入の目的が、業務の効率化・新たな付加価値の創造なのか、単なるシステムリプレースなのかにより、選定するシステム、投入するコンサルタントやお客様のメンバー構成などの人的資源が異なってきます。

ここでは、私が家庭菜園で実践している堆肥作りと、日々、仕事で感じているプロジェクトの成功要因、失敗要因を対比して行きます。

堆肥作り

プランターで、野菜を育て終わった後に、残渣(トマトで言うと実以外)を引き抜くと、プランター内に根が張り巡らされ、土が底面にうっすらと残っているだけのことがよくあります。根に付いた土を良く掃えば、半分から2/3程度は戻すことができますが、それでも、1/3程度は確実に失われています。

次の作物の準備のために、土や堆肥を投入することになりますが、その度に購入していたのでは、割高になってしまうので、残渣を土に還すことを試してみました。はじめは自己流で、残渣を切り刻んで大きめの鉢に投入し、頃合いを見て適当にかき混ぜる程度でしたので、途中、近所迷惑極まりない嫌な臭いがしつつも、土のような状態になりました。

その後、書籍やネット上の情報を参考に、炭素材(枯葉など)と米ぬかを残渣に加えて、発酵させることにより、上手くいくようになりました。
 とはいえ、たまに水分が多すぎて、嫌気性発酵になり(発酵過程として必要としている文書も多く見かけますが、家庭菜園では避けたいところです)、その臭気につられて招かざる客であるアメリカミズアブの幼虫が、堆肥鉢の中を跋扈していることもあります。

元々、残渣処理を目的として始めた堆肥作りですので、出来上がった堆肥は、土壌改良を目的にしています。動物の糞を投入すれば、肥料効果も期待できる堆肥になるのですが、動物の糞は購入しなければならないので、最近は、実施していません。

システム導入プロジェクト

システム導入の目的は様々ですが、大別すると、冒頭で述べたように、業務の効率化・新たな付加価値の創造か、単なるシステムリプレースかになります。

多くの場合は、前者を目的に掲げることになりますが、実質的には、システムリプレースが目的で、その結果・果実として、業務の効率化が得られることもあります。

目的と手段の観点から、過去に失敗してしまったプロジェクト、または成功に終わったプロジェクトを振り替えると、次のどちらかに当てはまると考えられます。

(1)目的と手段が逆転

10年以上前になりますが、私が会計のリーダーを務めさせていただいた導入プロジェクトは、目的とTo-Be業務要件が明確に示されおり、後はシステム導入するだけのつもりで参画しました。しかし、お客様メンバーが、As-Is業務を強く意識しながら打合せに参画しているので、それとなく理由を聞いてみると、To-Be要件が、As-Isを丁寧に分析した結果、得られたものではないことが判明しました。

すなわち、お客様の中では、目的達成のための手段としてのシステム導入、さらにその手段としてのAs-Is業務分析ではなく、As-Is業務分析が、打合せの目的になっていました。

パッケージを導入しているにもかかわらず、本来の目的を忘れて、As-Is業務を意識しすぎると、多大なコストを要することにもなりかねません。
逆に、システム導入は、目的達成のための手段であることを忘れずに導入を進めることができたプロジェクトは成功しています。

(2)投入リソースの不整合

前述した失敗プロジェクトは、結局、別のベンダーに取って替わられました。今になって思うことは、お客様の目的が、業務の効率化であったにも関わらず、我々のメンバー構成があまりもテクニカルに寄っていたことが、失敗の一因です。すなわち、システム導入が得意なメンバーだけが、プロジェクトに参画していたので、業務的な目的と整合を取ることができず、お客様の満足を得ることができませんでした。

終わりに

前項の(1)を堆肥作りに当てはめると、完成した堆肥を使用する際に、堆肥の投入目的を忘れてしまうと、非常に似た状況になることがあります。すなわち、土壌改良目的の堆肥を投入しているにもかかわらず、肥料効果を期待して、肥料分を投入しないでいると、生育が悪くなります。逆に、肥料効果目的の堆肥を投入しているのに、肥料分を投入すると、肥料分が過剰になり、これまた生育が悪くなります。

また、前項の(2)を堆肥作りに置き換えると、堆肥の材料と水分の関係に似ています。水分を過剰に投入しすぎると、前述した嫌気性発酵で済めばまだマシな状態で、最悪は、腐った状態になり使い物にならなくなります。

私の趣味を通して、過去の反省をする場になったような気もしますが、過去の失敗を活かしながら、業務とシステムの両面で、今後も、お客様のお役に立てればと考えております。

コラム担当:システムコンサルティング部
横須賀 亮介

※執筆者の所属は執筆当時のものであり現在とは異なる場合があります。