クラウド時代の情報システム部門のあり方

はじめに

クラウドの導入にともない、企業の情報システムは「所有」から「利用」へと変わります。業務部門が情報システムを「利用」する場合、情報システム部門を介さずに、クラウドサービス提供ベンダーと直接契約するケースも見受けられるようになりました。

このような時代に、情報システム部門はどうあるべきでしょうか。
現状の情報システム部門の課題やとりまく環境を踏まえ、情報システム部門のあり方を考えてみたいと思います。

はじめに、情報システムの「所有」から「利用」への流れはどのように変化するのでしょうか、クラウドサービスの動向をみてみましょう。

クラウド時代の到来

IDC Japanが2010年9月28日に発表した国内クラウドサービス市場予測によると、2010年の国内クラウドサービス市場は、前年比41.9%増の443億円規模となり、さらに、2014年の同市場規模は、2009年比4.9倍の1,534億円になると予測されています。
そして2009年から2014年の年間平均成長率は37.5%となり、企業のクラウドへの投資が急速に進んでいくと予測されています。

クラウド時代の到来とともに、情報システムの「所有」から「利用」へと変わる流れが大きく加速していくといえます。

情報システム部門を取りまく環境

つぎに、情報システム部門の現状をみると、一般的に既存の情報システムのトラブル対応など日々の運用業務の負担が重いため、変革のスピードが遅いと感じます。

一方で、経営をとりまく環境変化のスピードは増すばかりです。
急激な円高、希少資源の確保、派遣業法の改正、環境負荷対応など、事業形態にもよりますが早急に対応しなければならない経営課題が数多く存在しています。安定的に利益を確保するためには、これら経営課題に対応しなければなりません。そして、経営環境の変化にともない、業務の仕組みを柔軟に、迅速に変化させなければなりません。さらに、業務の仕組みが変われば、必要とされる情報システムも変わります。

すなわち、情報システム部門は、業務の変革にともない、柔軟に情報システムの変革が求められています。しかし、日々の運用業務の負担が大きいため、経営環境や業務要件の変化に対して、情報システムを適時に見直すほどの体力は残っていないと感じます。

クラウド導入による運用負荷の軽減

以上の背景より、情報システム部門は運用負荷を軽減する必要があります。
私は、クラウドの導入により運用負荷の軽減を図ることができると考えています。クラウドの導入方法について3点の提言を記載します。

  1. 情報システム資産を再評価し、コアシステムとノンコアシステムを分類する。
    自社の情報システム資産について、経営の貢献度など、企業としてのシステムの重要性を再評価します。
  2. ノンコアシステムについては、SaaS(*1)のクラウド方式を検討する。
    ノンコアシステム、すなわち重要性が低いと評価されたシステムについては、サービスごと「利用」することを検討します。
  3. コアシステムについては、IaaS(*2)、PaaS(*3)などインフラ部分のクラウド方式を検討する。
    コアシステム、すなわち重要性が高いと評価されたシステムについては、サーバー資源などインフラ部分のみを「利用」し、システムを当該インフラ上に自前で構築することを検討します。

クラウドの導入により、既存情報システム資産にかかる運用負荷を軽減できると思います。

クラウド時代の情報システム部門のあり方

最後に、クラウド時代の情報システム部門のあり方を二つ記載します。

  1. 経営層や業務部門とともに適切なクラウドサービスを検討する。
  2. クラウドの導入により運用負荷を軽減し、情報システムの柔軟な変革対応ができる体制を整える。

現状の運用負担から解放された情報システム部門は、経営環境の変化にともなう業務要件の変更に適時対応できる組織へと変革します。クラウド時代における情報システム部門は、ビジネス変化のスピードに追従する組織へと変革するものと考えています。

まずは、既存の情報システム資産の再評価から始めてみてはいかがでしょうか。

コラム担当:イノベーションデザイン推進部
原田 孝一

※執筆者の所属は執筆当時のものであり現在とは異なる場合があります。