短期的な成果と長期的な効果

地道な努力の大切さ

最近、お会いした人の書籍に、地道にコツコツと努力することの大切さに関する記載がありました。

大手金融系企業において、当時異例の若さで取締役に抜擢された営業の第一人者のメッセージでしたので改めて、自身の日々の業務への姿勢や人財育成に関する取り組みについて振り返るキッカケになりました。

ヒトの育成や組織の風土を変えるためには、あえて非効率とも思える取り組みを、地道に継続して行っていく必要がありますが、この点に関する認識・思いのズレは、いろんな組織で感じることがあります。

今回は、ヒトの育成ということに、少しヒントになりそうな話を紹介したいと思います。

非合理なことが合理的

ひとつ目は、購読しているメルマガに、『目からうろこの話』として記載されていた木材の話です。

日本で使用される建材は、高温の乾燥機の中に入れて短期間で乾かすという方法が主流なのですが、そうした木材は内部の水分量が均一化されにくく、施行後数カ月して、柱や梁の表面が割れる現象が生じてしまう難点があるそうです。ただ、強度には問題がないため、無垢材は割れるものとして説明されてきたとのこと。

かたや、釘などの金具を使わない伝統工法を手掛けている宮内建築では、まったく割れていない梁を目にすることがありますが、こちらで使用される木材は、水中乾燥という手法を使っているのだそうです。

この手法は、伐採したての木を川に浮かせ、水を吸わせることで、樹液を吐き出させます。これにより、引き上げた後、均一に水を抜くことができる、というのがメカニズム。

もちろん、時間も手間もかかりますが、均一に水が抜けるので割れにくく、樹液の油分も適度に残り、結果的に非常に質の高い無垢材になるそうです。

手間がかかり、一見、非合理だと思ったものが、長期的には合理的であるという一例ですが、ヒトの育成を考える際に、通じるところがあるなと感じました。皆さんはいかがでしょうか?

期待の鮮度管理は手間がかかる

もう一つは、上司から部下に伝えられる期待についての話です。

上司―部下間の期待のズレは、何が評価されるのかに影響を与えるため、その認識はすり合わせておく必要があります。

そのような認識ではいたものの、
『目標としてシートに書かせても、いつまでも同じ状態でそこにあると思ってはいけない。』、
『伝えた期待は、鮮度管理が必要で、そのままにしておくと、あっという間に劣化してしまう。』
といった記事を見かけたとき、自身が部下や後輩に伝えた期待の鮮度管理は十分だろうかと、ここでも考えさせられました。

期待の鮮度管理を保つためには、しつこくなく、目先のことに目が行きがちな頃合を見計らって、適切なタイミングで、改めて期待を伝えることが重要であるとのこと。

まとめ

『ヒトが第一、戦略は二の次と心得ること。優れた人材を得なければ、どんなにいい戦略も実現できない。』

ジャック・ウェルチの残した言葉です。

この言葉に異論を唱える方は少ないとは思いますが、本当の意味で『ヒトが第一』と思える対応をしているか、それが相手にどのように伝わっているかを組織の管理者は、今一度見つめなおす必要があるのではないかと考えています。

頭では分かっていても、実際の現場では、時間や効率、短期的な成果だけを求めて画一的な対応を部下や組織に求めていないでしょうか?

少ない投資で最大の効果を獲得する。効率化を推進し、少ない労力でサービスを提供する。
ビジネスを行う上では、とても重要な考え方であり、否定をするつもりはまったくありません。

ただ、地道な取り組みを、効率が悪いと切り捨ててしまったり、成果が見えやすいところ、目先の成果にとらわれすぎて、大事なことが何かを忘れていないかを、定期的に振り返り、考える必要があるのではないでしょうか。

新入社員を迎えたこの季節に、改めて考えてみてはいかがでしょうか?

参考文献:

  • 「どんな人にも大切な『売る力』ノート」 著 津田 晃 かんき出版
  • 「適材適所は幸せの素」 インフォテクノスコンサルティング株式会社 発行メルマガ
  • 「Biz Coach Magazine」 株式会社コーチ・エィ 発行メルマガ

コラム担当:イノベーションデザイン推進部
長谷川 徹

※執筆者の所属は執筆当時のものであり現在とは異なる場合があります。