感情のマネジメントについて考える

ビジネスに“感情”は不要?

ビジネスにおいては、なるべく自分の感情を押さえて論理的に考え、理性的に行動するのが良いとされ、「感情は邪魔なもの」という考え方が一般的になっています。

自身も、コンサルタントという職業柄、物事を常に論理的・合理的に考えられるように「戦略的発想」を鍛えるべく、いろいろな書籍を読んだりして自己啓発に取り組んできました。また、自身が携わったお客様の教育体系には、必ずといってよいほど論理的思考ができるように「ロジカルシンキング」といったような研修メニューが入っていたように思います。

確かにこの論理的・合理的な思考は重要なのですが、ビジネスの世界においては、明らかにそうではないと思われる意思決定がされている場面に度々遭遇することがあります。

問題の背景にある“感情”

自身は、「組織の人たちを生き生きとさせ,高度な成果を上げる」ことがマネジメントだと思っています。が、この“生き生きとさせる”が難しく、世の中のマネージャー達も同様に日々頭を悩ませているようです。

「自分の考え・思いが部下に伝わらない」、「メンバーに受身でなくもっと積極的に行動して欲しい」、「チームをもっと活性化させたい。元気にしたい」。

部下を率いる立場の多くの方から、お聞かせいただくこれらの悩みの背景には、部下達の感情や組織の風土といった要因が大きく影響を与えていると考えています。

ヒトや組織は理屈どおりに動くものではありません。もちろん論理性が重要な場面もありますが、多くは感情や思い、価値観といった非常に曖昧でつかみどころのないものが行動の非常に大きな源泉となっていると思います。

曖昧な他人の感情を完全に理解することは無理だといって切り捨てるのではなく、ビジネスにおけるヒトの感情にも目を向け、より良い結果をもたらすことができるよう、感情を適切に「マネジメント」することが必要だと考えます。

生き生きとした組織を作るために (マネジメントと感情)

最近、同僚が持っていた『戦略的愛社精神のススメ』という書籍をちらっと目にした際、仕事での思いにあふれた職場を生み出すため、「上司は、部下の愛社精神を育む、”情師”になろう」 といった記載がありました。

ヒトは、お金のためだけではなく、「誰かの役に立っている(存在価値がある)」、「上司は私のことを考えてくれている」、「大切な仕事を任されている」、「成長を実感でき、自信もついてきた」と感じることができるところで働きたいのです。

そういう思い(感情)を抱けるように、仕事の仕組みを工夫し、機会を与え、各メンバーに働きかけることをすることが上司(=情師)の役割だと考えています。

感情はヒトそれぞれ、場面ごとに違いますから、何にもましてコミュニケーションの質と頻度が重要になり、その時に傾聴スキルやコーチング、ヒアリングといったテクニックが活かされるのだと思います。

ちなみに、この”情師“の話をあるお客様にしたところ、「情師の”情”は情報の”情”か」と質問されました。必要な情報を集約・取捨選択して意思決定を行う世のマネージャーにとっては、情師の”情”は、感情でもあり情報でもあるのだなと思いつつ、お客様が今、意思決定しなくてはならない問題の背景にはどんな情報と感情があるのだろうとまた想像を膨らませている今日この頃です。

参考文献: 『戦略的愛社精神のススメ』 豊田義博 著 プレジデント社

コラム担当:イノベーションデザイン推進部
長谷川 徹

※執筆者の所属は執筆当時のものであり現在とは異なる場合があります。