新聞の読み方≪中≫ <連載> 第2回
BSジャパン顧問  池内 正人

【執筆者プロフィール】
池内 正人(いけうち まさと)
1933年東京生まれ。早稲田大学第一政経学部を卒業後、日本経済新聞社入社。経済部長、編集局総務を経てテレビ東京に転じる。取締役報道局長として小池百合子、野中ともよ、小谷真生子など女性キャスターを登用した「ワールドビジネスサテライト」を立ち上げる。編成担当、営業担当、副社長を経て、99年にBSジャパン社長。2005年より現職。
<主な著書>
『テレビ局の内定がほしいなら、これは知っておけ』(PHP研究所)、『おかねのはなし』(ポプラ社)。人気ブログ『経済なんでも研究会』を執筆中。

赤線を引きながら読む

新聞は見るだけでなく、自分が勉強しようと決めた分野の記事を繰り返し読むことが大切です。見ることで一般的な常識を頭に入れ、読むことで専門的な知識を身に付けるためです。
大事な記事を読むときに、重要だと思う部分に赤線を引いてみましょう。赤線の箇所はできるだけ少ない方がいい。

長い記事でも、せいぜい10か所ぐらいまで。記事全体が真っ赤になるようでは、どこが大事なのか判らなくなってしまいます。

ノートにメモを書き込む

赤線引きに少し慣れたら、大学ノートを用意してください。あらかじめ4行ぐらいの間隔で横線を引いて、1ページをいくつかのスペースに分割しておきます。
スペースの初めに、新聞の名前と朝刊か夕刊かの区別。それに簡単なタイトルを記入します。
そのあとに、赤線を引いた部分をできるだけ簡潔に書き入れる。作業はそれだけです。
ときどきはこのメモだけを見て、自分で記事を書いてみると、メモが正しくとれているかを検証できるでしょう。
メモを短くするために、記号を多用することも実験してみてください。たとえば朝日新聞はA、読売はY、日経はN。朝刊はm、夕刊はeというように。
さらに財務省はMOT、日銀はBOJ、前年比はy+かy-、前月比はm+かm-というぐあいに省略すれば、メモはどんどん短くすることができますね。
一例をあげておきましょう。7月16日の日経新聞に載った「中国、7.5%成長に鈍化」という記事です。

 


7.16 Nm 中国の成長鈍化 国家統計局 4-6月期GDP ary+7.5% m-0.2p 輸出伸び悩み 生産減 刺激策とらず


 

こんなふうになります。arは年率、pはポイントです。自分が判ればいいのですから、記号や省略は自己流にたくさん作ってください。赤線を引かなくても、メモはすぐとれるようになりますよ。
このノートをいつも手許に置いて、ときどき目を通すようにしましょう。数字などを暗記しようとする必要は全くありません。
ときどき見るだけで、たとえば中国経済の動向がひとりでに頭に入ってきます。数字などは、必要なときにメモを見ればいいのです。
3か月後には、7-9月期のGDPが記事になるでしょう。同様にメモして前回のメモと比べれば、時系列的な動きも完全に理解できます。
また記事のなかに判らない単語が出てきたら、メモの最後に書いておいて意味を調べてください。


新聞記者の流儀です


新聞記者は記者会見のとき、メモをとります。相手の言うことを速記のように書きなぐることもできるでしょうが、それでは記事が書けません。
発言を聞きながら、どこにポイントがあるのかを見極めメモします。こうすれば頭のなかで記事が出来上がり、すぐに原稿が書けるのです。
要するに記事を読んでメモする方法は、新聞記者が記事を書く前に用意するメモを再現するわけです。だから新聞記者的な勉強法だと言ってもいいでしょう。
とりわけ新聞記者を目指す人は、自分のメモを見て記事を書く練習をしておいてください。きっと役立ちます。
(続きは10月)




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