課長に未来を、若手に夢を

多くの企業で今、課長が疲弊していると感じます。経営からの厳しい要求、多様化した雇用形態の社員への対応、採用控えによる30代中盤から後半の社員の少なさ、などで課長の仕事が増加。経営と現場の間に挟まれ、そもそも自分はどうしたいのか?について考える時間をとることができず、目の前の仕事に追われてしまう。私達は今、そんな課長さんが、自ら組織の明日を描き、自らの意思で目標を創りあげることを支援する取り組み行っています。

その企業では、これまで、体系的な教育の仕組み作り、リーダーシップ研修などを通じ、組織の「あるべき姿」を追求してきました。しかし、作られた仕組みがなかなか運用されない、教育で学んだことが現場で発揮されない、という問題点を抱えており、その原因を探るうち、仕組みや教育は、自分達がその必要性を感じてこそ効果を発揮するものなのではないか、という気付きがありました。プロジェクトでは毎週1回、課長1人ずつと私達とで面談をし、自分はどういう時に喜びや充実感を感じるのか、お客様に何を提供していきたいのか、どういう組織を創っていきたいか等、組織・個人の両面から、ありたい姿を考えます。そして1ヵ月に1回は、全課長参加のワークショップで、自分の気付きを深めたり、横の連携の重要性を感じる場を持っています。

面談やワークショップの中で、会社や上司の方針だからではなく、自分の思いや希望を心から自分の言葉で語って下さる時、その課長さんが、生き生きと実現に向けて動かれる姿が想像できることがあります。そんな時私は、人は心から何かをしたいと思うことに対して、自分の持つ力が最大限発揮できるのではと感じ、またその瞬間を共有出来ることを嬉しく感じます。

そのプロジェクトは、4月以降は自らが立てた目標の実現に向けて動き出します。自分が目指す姿の実現のため、組織や人(上司、部下)をどう動かし、自分はどうあるべきか。部下の適材適所の配置や、評価の指標作りなど、色々な施策案が出されています。上から与えられたのではないオリジナルな目標の実現に向けて、動き出すことが楽しみです。

色々な企業で、「課長になりたがらない若者が多い 」という声をよく聞きます。しかし、データによると、最近の若者の出世志向が、今も昔と比べて低いわけでないようです。一般企業に就職が決まった大学・大学院卒業予定者に対する調査では、「仕事をするからには、少しでも上のポジションに昇進・出世したい」という問に対して、理想との回答が63.0%と大きく過半数を上回りました。組織で生きる以上、少しでも周囲に認められたいと思う気持ちは自然なものだと思います。もしもある企業の中で、「出世したくない」若者が多いとしたら、それは、身近な管理職である課長に対して、給料は一般層と大して変わらないのに負うべき責任だけが大きくなっていることに悲哀感を覚え、その企業への諦めを感じていることの反映ではないでしょうか。課長が、いかに生き生きと仕事に取り組むかで、その企業の活力が変わってくるのではと思います。

先日、そんなことを考えていた時、印象深い言葉に出会いました。「おもしろおかしく」を、社是とする堀場製作所の創業者の堀場氏の言葉で、「日本人はなぜか仕事とはしんどくて大変なものだと頭に刷り込まれている。もっと自分を大切にせないかんと思います。人生80年のうちの最も貴重な40年を使う仕事が『おもしろおかしく』なくて、何のために生きるのか」というものです。仕事を楽しむというスタンスを社是にまでした気持ちの伝わる、明快なメッセージだと思いました。

仕事を受け身でなく自分のものとしてとらえ、楽しむことができる課長を、いかにたくさん組織で作り上げていくか。それが、組織の明日を創るかもしれません。まずは、自分オリジナルの少し尖った目標を立ててみることを、私達と一緒に始めてみませんか。

参考文献:

  • 『職場が生きる・人が育つ「経験学習」入門』松尾睦 著
  • 「新入社員の理想と自信」ヤフーバリューインサイトより

コラム担当:イノベーションデザイン推進部
仁尾 瞳

※執筆者の所属は執筆当時のものであり現在とは異なる場合があります。