ステイハングリー・ステイフーリッシュ

スタンフォード大学でのスピーチ

2011年10月6日に亡くなった、米アップル社、前CEOであるスティーブ・ジョブズ氏が、大学での卒業式にゲストとして招かれ、自身の生い立ちや人生観などを余すところなく話した有名なスピーチがあります。
彼がこれまでに数々の革新的なものを、この世に送り出した功績は言うまでもありませんが、このスピーチの中にビジネスパーソンとして学ぶべき点、感じる点は多いのではないでしょうか。これらを少し覗いてみましょう。

点と点をつなげる

ジョブズ氏の産みの母親は、未婚の大学院生で、彼を育てられる環境は整っておらず、ジョブズ氏は養子縁組として引き取られ、育てられました。
17歳でリード大学に入りますが、経済的な理由と、講義がつまらないと感じていたことも多く、半年で退学します。
しかし、興味のある講義は、退学した後も、大学に潜り込み、講義を受けていました。キャンパス内貼られているポスターを見て、その文字の美しさに「カリグラフ」を学びます。

そして10年後、初代マッキントッシュにこのカリグラフの知識を注ぎ込みます。
「将来をあらかじめ見据えて、点と点をつなぎあわせることなどできません。できるのは、後からつなぎ合わせることだけです。だから、我々はいまやっていることがいずれ人生のどこかでつながって実を結ぶだろうと信じるしかない。運命、カルマ…、何にせよ我々は何かを信じないとやっていけないのです。私はこのやり方で後悔したことはありません。むしろ、今になって大きな差をもたらしてくれたと思います。」

愛と敗北

ジョブズ氏は、マッキントッシュを発売した1年後、外部から招聘した人間と対立し、アップル社を解雇されました。その後、NeXT社、ピクサー社を起業しますが、NeXT社の技術に価値を見出したアップル社に買収され、再び、アップル社に復帰することになります。

「アップルを追われなかったら、今の私は無かったでしょう。非常に苦い薬でしたが、私にはそういうつらい経験が必要だったのでしょう。最悪のできごとに見舞われても、信念を失わないこと。自分の仕事を愛してやまなかったからこそ、前進し続けられたのです。皆さんも大好きなことを見つけてください。仕事でも恋愛でも同じです。仕事は人生の一大事です。やりがいを感じることができるただ一つの方法は、すばらしい仕事だと心底思えることをやることです。そして偉大なことをやり抜くただ一つの道は、仕事を愛することでしょう。好きなことがまだ見つからないなら、探し続けてください。決して立ち止まってはいけない。本当にやりたいことが見つかった時には、不思議と自分でもすぐに分かるはずです。すばらしい恋愛と同じように、時間がたつごとによくなっていくものです。だから、探し続けてください。絶対に、立ち尽くしてはいけません。」

死について

ジョブズ氏は、1年前、医者からすい臓がんであることを告げられ、もって半年であると伝えられます。
「人生でもっとも死に近づいたとき、死ぬという認識が、重大な決断を下すときに一番役立つのです。なぜなら、永遠の希望やプライド、失敗する不安…これらはほとんどすべて、死の前には何の意味もなさなくなるからです。本当に大切なことしか残らない。自分は死ぬのだと思い出すことが、敗北する不安にとらわれない最良の方法です。我々はみんな最初から裸です。自分の心に従わない理由はないのです。」

人を幸せにする製品

これまでの内容を改めて解説しなくても、学び感じ取れるのではないでしょうか。スティーブ・ジョブズ氏の生い立ちや経歴を辿ると、突出した技術力を持っているわけではありません。突出した技術だけでiphoneなどが作れるのであれば、日本でとっくに作り出されていたと思われます。

ジョブズ氏は、「本当にその製品が人を幸せにするものなのか」を常に考えていたのではないでしょうか。
iPod、iPhone、iPadのデジタルライフスタイルシーンを創造してきたジョブズ氏の言葉からは、人を幸せにすることができるものを、これからもこの世に送り出してほしいという願いが感じられます。
今すぐに役に立たなくても、将来役にたつことは、その時、その時の経験の積み重ねであり、それらを続けることが大切なのではないでしょうか。

すばらしい仕事に出会い、仕事を愛し、立ち止まることなく追い続ける。
将来そう感じることができるビジネスパーソンでありたいと願います。

参考文献:

  • スティーブ・ジョブズ名語録 人生に革命を起こす96の言葉 PHP研究所

コラム担当:イノベーションデザイン推進部
風間 英治

※執筆者の所属は執筆当時のものであり現在とは異なる場合があります。