ポジティブにいってみよう

自分や周りの人のいい点を言えるだろうか

私達は、自分や周りの人のいい点をいくつ言えるだろう。昨日は何回人を褒めただろう。
人のいい点よりも悪い点が目に付き、ネガティブな発言が多くなっていないだろうか。私達の社会では、「出来る」ことよりも 「出来ない」ことに目をむけがちであり、褒めるよりも批判することの方が容易にできてしまうと思う。

遅れてきたポジティブ心理学

心理学における研究は、長い間不安や鬱の研究など「ネガティブな面」に目を向けていた。しかし最近は、ポジティブな感情が人に与える影響の大きさが注目され、世界をリードする研究者の多くがポジティブ心理学の研究を行っている。ここでいうポジティブとは、人を受け入れ、認知することに通じ、ネガティブは、批判やあきらめに通じる。

最近の研究によると、ポジティブな感情は、人や組織に活力を与え、視野を広げ、自分とは違う考え方や行動に気づかせる効果がある。特にリーダーがポジティブな感情を積極的に示した時にはチームの成果を高めることが分かっている。

一方ネガティブな感情は、人を肉体的・精神的に追い込んでいく。戦時の北朝鮮での米軍捕虜収容所の死亡率は、38%という異例の高さだったという。食料や環境が他と比べて悪かったわけでも、拷問などによる死でもない。その後の研究により、北朝鮮側が、捕虜同士の密告の推進、全員の前での自己批判の強制、など人間関係から得られる心の支えを奪ったことによるあきらめ感の蔓延が原因であることが分かっている。あきらめ、絶望により人は死にさえも至るのだ。

職場におけるポジティブの効用

では、職場においてはどうだろう。仕事において、自分が役に立っているという「自己有用感」は最も「燃え尽きない」動機付けの要素だと言われている。金銭報酬のみが動機付けとなり得るのはアルバイト等の定型的な業務であり、いわゆる仕事では、自身の力や存在が認められる等の他の点も合わさって初めて、金銭報酬が動機付けになるというのだ。 自分を振り返っても、金銭的に恵まれていても自分が役に立っていないと思うことほど徒労感を感じることはない。

人は、認められ褒められることで、自己の有用感を認識し得る。ギャラップ社の調査によると、頻繁に褒められ、認められている人には以下のような傾向があるという。


  • 生産性が高い
  • 顧客の忠誠心や満足度が高い
  • 仲間意識が強い
  • 会社を辞める比率が低い

逆の場合、つまりはネガティブな言葉の飛び交う職場を想像した場合、企業の活力が大きく異なることが想像できる。皆さんの職場ではどうだろか。

職場における「褒め」方

「認め」「褒める」といっても、一体何をしたらいいのか。

ここで安易に、表彰制度を取り入れる職場が多い。なるべく全員が表彰されるように賞を設定し、順番に表彰していくというものだ。これでは残念ながら効果は薄い。最後の方に表彰される人にとってみれば、無理やり感が否めず、また、画一的な方法での表彰は効果が期待できない。評価する側の自己満足であり、あくまで形式的なものであるということが透けて見破られてしまう。不快に感じる人さえもいるだろう。

人を褒め、認める上で忘れてはいけないことは、個人の違いに注目し、あくまで、相手が何をして欲しいかという目線で考えるということだと思う。誰もが同じものに同じだけの価値を感じるわけではなく、目に見える報酬や贈り物を喜ぶ人もいれば、言葉や評価に感激する人もいる。大勢の前で温かい言葉をかけてもらいたいという人もいれば、尊敬する人から直接褒められることが嬉しい人もいるのだ。

まずは部下やメンバー、あるいは上司について、以下のことが言えるかどうか考え、分からない場合は是非、相手を知ろうとしてみて欲しい。


  • 誰から褒められ、認められたら嬉しいだろうか
  • どんな方法で褒められ、認められたいだろうか
  • どんな形で評価されると、やる気が起きるだろうか
  • これまでで一番嬉しかったのは、どのような評価だろうか

自分の周りの「強み」を知ろう

自分や周りのポジティブな面に目を向ける為に、効果的なツールがある。ここで詳しくご紹介はしないが、インターネットにより診断が行え、世界100万人以上に利用されてきたギャラップ社の「ストレングス・ファインダー」だ。

このツールでは、人が後から身につけた知識・行動様式ではなく、生まれながらの各人の強み(ここでの強みとは、完璧に近い成果を生み出せる力を意味する)を、34個の中から上位5つ特定する。それぞれの資質を持つ人の職場での活かし方についても描かれており、人材の効果的活用(人材配置、次世代の管理職の選抜など)を考える際にも利用できる。

私も診断をしてみて、仕事でやりがいを感じる瞬間、人から言われて嬉しかった言葉、転職の際に何を求めたのか、など、なるほど自分はこういう資質のある人間だからこのように考えたのかと納得した。自分で行うだけでなく周りの人に行ってもらうことで、弱点よりも強みに目がいくようになった。自分・相手を知るきっかけになるかもしれないので、是非試してみて欲しい。

最後に

生まれつき自分はネガティブだから、と思う人もいるだろう。確かに生まれながらの違いはあると思う。しかし、ここで問題なのはどのように意識し人に働きかけるかだと思う。

自分や周りの人の悪い点ではなく、いい点に目を向け、相手にそれをポジティブな言葉で伝える。シンプルなその行動が、自分や周りの人、ひいては自分の所属する組織を活性化させていくと思えば、いつから始めても遅くはない。あえて、ポジティブにいってみよう!

参考文献:

  • 『心のなかの幸福のバケツ』トム・ラスドナルド・O・クリフトン
  • 『さあ、才能に目覚めよう』マーカス・バッキンガム&ドナルド・O・クリフトン

コラム担当:イノベーションデザイン推進部
仁尾 瞳

※執筆者の所属は執筆当時のものであり現在とは異なる場合があります。