IFRS元年に取り組む課題

はじめに

上場企業および上場企業を親会社に持つ連結子会社および関連会社(以下、対象企業)は2010年3月期から国際会計基準(以下、IFRS)の任意適用が認められ、2012年にも強制適用が判断される。強制適用の時期は2015年、あるいは2016年となり、対象企業は強制適用までにIFRSに準拠した財務報告体制を整備する必要がある。

強制適用までに5年から6年の期間が残されているが、各社の整備状況はどうだろうか。ワークスアプリケーションズが本年3月5日に発表したIFRSのアンケート調査結果によると、IFRS導入プロジェクトを2010年より開始すると回答した企業は56.2%と半数を超え、また20%近くの企業が「すでに開始している」と回答している。2010年はIFRS元年となりそうである。

本コラムでは、IFRS導入プロジェクトの全体像について触れ、IFRS元年に取り組むべき課題を考えてみたい。

IFRS導入プロジェクトの全体像

「IFRS導入プロジェクトは、大きく3つのフェーズに分けられる。

第1フェーズは、「調査・分析」フェーズである。詳細は後述するが、必要な期間は3ヶ月から6ヶ月と見積もられる。
第2フェーズは、「計画・実施」フェーズである。会計方針の決定や、業務フローおよび情報システムの整備をおこなう。必要な期間は1年から2年と見積もられる。
第3フェーズは、「運用・改善」フェーズである。IFRSの初度適用やIFRSの更新に対応する。必要な期間は2年以上と見積もられる。

上記がIFRS導入プロジェクトの全体像であり、トータルでおよそ3年から5年程度のプロジェクト期間が必要となる。IFRSでは前年比較が求められるため、仮に2015年3月期を最初のIFRS報告期間とすると、前期2014年3月期の財務諸表の作成も求められる。以上より逆算すると、2010年がIFRS導入プロジェクトの開始元年となることが理解できる。

では、対象企業がIFRS元年に取り組むべき課題とは何だろうか。

「調査・分析」フェーズの概要

IFRS元年は、第1フェーズ「調査・分析」フェーズに取り組む。「調査・分析フェーズ」の目的は2つある。

一つ目の目的は、IFRS適用の影響度を分析することである。内容は、IFRS適用のために現状の会計方針とのギャップを洗い出し、対応すべき課題を明らかにする。
そして二つ目の目的は、IFRS導入の計画を立案することである。洗い出された対応すべき課題について、対応方針および対応計画を策定する。

このフェーズで、課題の洗い出し漏れなどがあると、プロジェクトの後工程の遅延など大きな影響を与える。そのため、第1フェーズはIFRSプロジェクト全体の中で、非常に重要なフェーズであるといえる。

「調査・分析」フェーズのポイント

「調査・分析」フェーズに取り組むにあたり、考慮するポイントがある。

一つ目は、調査範囲の決定である。
業務プロセスや情報システム、そして利益に対する影響度を考慮し、かつ、外部専門家を含めた調査に関与可能な人員を踏まえて、調査範囲を決定することが望ましい。つまり、限られたリソースの中で調査対象に優先順位をつけるのである。

二つ目は、現行の会計方針とIFRSのギャップをどのように修正するか、そのシナリオを描くことである。
ギャップの修正方法による業務プロセスや情報システムに対する影響度も明確にしておく。また、IFRSそのものの改定に対しても常に注意を払う必要があり、最新の動向を把握されたい。

調査範囲の広さやギャップの修正シナリオ次第で、IFRS導入プロジェクトに要する期間が大きく異なってくる。可能な限り早期に対応することが望まれる。

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コラム担当:イノベーションデザイン推進部
原田 孝一

※執筆者の所属は執筆当時のものであり現在とは異なる場合があります。