コミュニケーション再考

本日は前回テーマにしたモチベーションとともに、よく話題に上る『コミュニケーション』についてちょっと考えてみましょう。

ぶらりと書店に立ち寄れば、コミュニケーションに関係しそうな「話し方」「聞き方」等を題名につけた書籍が、それこそ山の様にあります。それだけ関心の高いテーマなんでしょうね。実際に手にとってご覧になった方も沢山いらっしゃることと思います。

また、ビジネスマンの基本的なスキル、ビジネスマナーの一環として、コミュニケーションスキルの向上を新入社員の研修メニューとして用意されている企業もたくさんありますよね。

ぱらりとめくった書籍には、コミュニケーションはモチベーションと並んで企業の最重要課題の一つと捉えられており、相互に密接に関連し、互いに強化しあう正の相関関係があるとの調査結果が紹介されていました。いずれも企業経営のあらゆる場面、企業内のあらゆる階層で求められていることはどうやら確かなようです。

誤った認識!?

コミュニケーションについて考えるとき、「良い」とか「悪い」までで、それ以上の深い検討が加えられることはほとんどありませんよね。多くのお客様からお聞きする限り、コミュニケーションは、戦略立案や直面する環境、組織上の問題点などとは(無意識のうちに?)別次元の問題として捉える傾向がみてとれます。「トップのメッセージを浸透させたい」とか「各階層間のコミュニケーションが不十分」などとお話をされる一方で、依然コミュニケーションは各現場できちんとやっていくべきものとして考えていることが多いようです。

コミュニケーションが肝

インターネットの普及により情報の収集や交換が容易となり、単に「知っている」ということ自体の価値はどんどん低下しています。内部・外部の環境調査、分析の結果得られる情報を基に立案される戦略の差も、企業間に大きな差がつきづらくなってるということが実態としてあるのではないでしょうか。

戦略をきちんと伝えて確実に実行・修正できるか否かが、業績に大きな影響を与える要因であると言えそうですよね。きちんと伝えて確実に実行・修正する。やはり『コミュニケーション』が肝になりそうです。その事実と向き合い、一日も早く取り組みを始めなければいけません。

コミュニケーションの本質は「共有」する文化

そもそもコミュニケーションの語源は、ラテン語のコミュニカーレ(communicare 共有する)です。単に「話す」とか「聞く」ではないということ、実に奥深いですよね。つまり、コミュニケーションは「共有」することと捉えるならば、コミュニケーションはまさに企業の文化・組織の風土そのものと言い換えることができるかもしれません。

「共有」のない経営意思決定は失敗する

打合せの場では喧々諤々、同じような言葉でお互いわかったつもりでも、いざ実行となった瞬間に、全く違うことを考えていたことが表面化。そもそも何が決まったのかすら良くわからなくなり、結構な時間を費やして合意に至ったはずなのに結局は先送り。そんな経験をお持ちの方も少なからずいらっしゃるはずです。意思決定に至るまでの段階で、関係者間で「共有」できていなかったのかもしれません。

ヒトやカネ、時間は限られているので、全ての施策を実行に移すことはできません。限られたリソースを最大限に活用するためには、数ある施策のなかから優先順位をつけ、期待効果のより大きな施策から着実に実行することが求められます。そのためには、反対意見も含めた「共有」が大前提となります。更に決定後の実行・修正段階では、関与する要員数が一気に増え、課題の範囲が幅広くなる上に迅速な対応が求められますので、「共有」はより一層重要でかつ難しくなります。

「共有力」を強化して文化を醸成する

グループウェア導入に対する期待とは裏腹に多くの失敗事例が示している通り、「システムの導入でコミュニケーションの活性化が満たされる」と誤ってガイドされた企業が多いのはとても残念なことです。コミュニケーションの本質は共有する文化ですから、従業員のモチベーションを維持・向上するのと同様、即効性のある特効薬はありません。

この「共有力」を高め、きちんと伝えて確実に実行・修正する文化を醸成していく地道な取り組みが、中長期的に企業の底力をつけ、競合他社に負けない競争力の源泉となります。

リーダーの行動そのものが最強の「共有力」

そこでマネジメントに求められる力は、組織の価値観をメンバー一人一人に浸透させる力です。浸透するまで、繰り返し繰り返し伝え続けるしつこさ、我慢強さなのかもしれません。そして最も強力な「共有力」はマネジメントの行動そのもの、百聞は一見にしかずです。その行動は価値観が具現化したものとして、強力な浸透力を持っています。

最後に誰の言葉か忘れましたが(正確でもないかもしれません)・・・

条件が揃わないから動けないのではない、動かないから揃わないのだ。
まずは一歩踏み出す勇気を持とう。
その一歩が事態を動かし、自分の意識と行動を変え、道を拓くのである。


前回のコラム『モチベーション再考 ?明るく、楽しい、前向きな雰囲気の醸成にむけて?』には、想像を上回る多くの方からの反響をいただきました。(ココまでの反響があるとは・・・正直びっくりしています)

総じて言えることは、モチベーションの重要性は理解できる。生産性に影響を与えていることも、なんとなく理解はできる。ただ、どうすれば維持・向上できるのかがよくわからないということのようです。

前回のコラムでは、従業員のモチベーションを維持・発展させる第一歩は、実態を正しく捉えること、従業員の声に耳を傾けることから始まると申し上げました。

従業員のモチベーションがどの程度高いか(あるいは低いか)、その実態を把握していらっしゃいますか?
アンケート等を利用して調査してみてはいかがでしょうか。確かに、匿名性が確保されていないと調査しづらい領域ですから、外部第三者のサービスを活用してみるのもよろしいかもしれませんね。